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傘(King Gnu 作詞:常田大希) 歌詞の感想と解説!

さよなら ハイになったふりしたって
心模様は 土砂降りだよ
傘も持たずにどこへ行くの?
あれこれ 不安になったって
どうしようもない ”運命でしょ?”
曇りガラス越しのあなたには
もう何も届いちゃいない
 

今日も流行りの邦楽を取り上げていこうと思うのですが、その前に、皆さん本当に台風に気をつけてください。
さて、本日はKing Gnuさんの「傘」をみていこうと思います。
King Gnuさんは私の中では「白日」で一気に人気が増したような印象なのですが、やっぱり「虚しい」という言葉が1番ぴったりなアーティストなのかなと思います。
今回もそんな「人間の目を逸らしたくても逸らしきれない部分」を深く繊細に表現した楽曲に仕上がっている印象が出だしのこの部分で見てとれます。
 

3回目のアラームで
ようやく起き上がれそうな朝
眠い目を擦りながら
顔を洗って コーヒーを流し込め
 

この部分はかなり重要なポイントになりそうですね。
まず、「3回目のアラームでようやく起き上がれそうな朝」ですが、本当はこの人は何回目のアラームで起き上がることができたのでしょうね。
少なくとも、早くとも3回目までは起き上がることができない。そこから何回アラームが鳴ったら。
そして次は、私も読んだ時に目を疑いましたが「顔を洗ってコーヒーを流し込め」というフレーズ。
すごく主人公の毎日の生活が「誰か」に支配されていて急かされているような印象を抱きませんか?
こういうの見るとKing Gnuさんはやっぱり聴いている側を歌詞によって惹き落としているんだなっていうのを感じますよね。
さすがオリコンチャート1位。
 

運命なんてハナから
信じきれやしないよな
深読みのし過ぎばかりじゃ
満たされやしなくて
 

これもまた難しい部分になりましたね。
ここで私が注目したいのは「深読みのし過ぎばかりじゃみたされやしなくて」。
人間には欲があります。
誰しもみんな。
そして、それを行動に移すことで実際に自分の理想の世界を作っていこうとするわけです。
しかし、それもうまくいくことばかりじゃないわけですね。
「本当にしていいんだろうか」「これでいいんだろうか」「やばいことになったらどうしよう」「これやるともしかしたら…」など、ますます不安が募って、最終的には何も行動できずに終わってしまう。
そんな毎日を、縛られながらただ生きている。
 

もっと話したいんだ
もっと近づきたいんだ
遠くで眺めていたくは無いよな
どんな時だって
 
 
本当にいい歌詞だなってつくづく思います。
「もっと近づきたいんだ」からの「遠くで眺めていたくは無いよな」なんて、人間の片思いをそのまま言っているようなものじゃないか。
近づこうとしていろいろ頑張って悩んでってするけど、結局何もできずに終わったり、変に遠くで眺めることになってしまったり。
そんな「距離」で人間の悩みを表現している。素晴らしいですね。
 

ガラス片を避けながら
直行直帰明時の毎日さ
満員電車に息を潜め
鳴り響いたベルが発車の合図さ
つないだ手確かめた
確かに僕らここに居たのさ
寄せては返す波の中を
必死に立っていたんだ
幸運なんかありやしないよな
ただのレースとは違うよな
巷で流れるラブソングのようにはいかないね
 

ここでポイントとなるのは「寄せては返す波の中を必死に立っていたんだ」という部分。
自分はただ立っているだけでいい。眺めているだけでいい。
そんな時、ふと波が自分の足元まで伸びてきてくれないかと願ったりするわけですね。
でもそんなことはなく、いつも期待ばかりさせて遠のいていく。
これって本当にそのまま片思いの錯覚を表現しているようで、これを「波打ち」という三文字の言葉で表すことができてしまうような比喩で表現し切れてしまう。
この凄さがKing Gnuの魅力の一つですよね。
 

結局は愛がどうとかわからないよ未だに
そう言い放った自分の頼りない背中を見た
 

「そう言い放った自分の頼りない背中を見た」人は一体誰なんでしょう。
きっと、主人公が主語になっているんだと思うのです。
でも、一生懸命考えたんですけど、自分の背中を見る方法って誰かに写真を撮ってもらうことでしか実現しなくないですか?
ということで、一度原点回帰で曲のタイトルに立ち返ってみると「傘」なわけです。
雨が降っている状況を思い浮かべてください。
水溜り、できますよね。
ふと振り返って下を向くと、あら。
あらあらあらあら。
背中、見えるんです!
意外なことに今まで「傘」に関するイメージが浮かんでこなかったんですが。
最後の最後で挟んでくるとは。
これかも聞き続けたい素敵な一曲ですね!